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しらら役・Lynn×椿白團治役・江口拓也インタビュー

自然に出てきたお芝居がキャラクターを形作る

おふたりはオーディションで役が決まったそうですが、そのときの手ごたえはいかがでしたか?

江口 受けたのは椿白團治だけだったんですが、まずオーディションに落語があるということにビックリしました。

Lynn 私もしららだけを受けましたが、最初は原作の抜粋セリフのみだったんですよね。でも、直前で「落語も追加になりました」と聞いて「えっ!? 何を頼りにやればいいの!?」と動揺していました。

江口 ひとまず我流でやって持ってきてくれということでしたけど、テンポ感とかもどうしたらいいのかわからなくて……。今は便利な世の中なのでスマートフォンで検索すれば落語が聞ける時代。とはいえ、落語は演じる方によってニュアンスも話の運び方も違うものなので、雰囲気だけお手本にさせていただきつつ、パッションを伝えることしかできないなと観念してオーディションに臨みました。

Lynn 気合いで行くしかないって感じでしたよね。オーディションで行なう落語は、検索しても男性の師匠が演じている映像や音声しか見つからなかったので、これを女性がやったらどうなるんだろう……と考えながら必死にやらせていただきました。

江口 まずは決まってから考えようみたいな(笑)。実際、この作品では役が決まったあとに説明会のような席を設けていただき、そこにいらっしゃった上方落語の師匠に一席落語を見せていただいたりもしました。手厚くフォローしていただけてありがたかったです。

落語以外のセリフ部分に関して、特別なディレクションはありましたか?

Lynn 私はなかったですね。本番でも音響監督の納谷(僚介)さんに「そんな感じで~。あと落語はがんばって!」と言われました。

一同 (笑)。

Lynn でも、オーディションでは自信があったわけじゃないんです。しららはめちゃめちゃかわいい女の子ですし、役がきまったらうれしいなと思いつつ、心のどこかでこの役は自分じゃないなと……。ですから、原作のTNSK先生に「よかったです」とおっしゃっていただいたときも「えっ、本当に!?」と信じきれませんでした(笑)。

江口 ピッタリだと思いますよ! 僕の演じる椿白團治は、天才落語家でありながら私生活ではちゃらんぽらんということでオーディションではフィーリングでダメさ加減を出してみました。

白團治のオーディションのときに唯一笑いが起きたのが江口さんだったとうかがっています。

江口 たぶん全部伝えようとして己の内側にあるダメ感を全部さらけ出したんでしょうね。それが功を奏したというのはありがたいです。ただ、自分ではそこまでダメだと思っていなかったので、本番でTNSK先生に「オーディションのときのダメ感でお願いします」と言われてしまって「あれ!? そんなにダメだった!?」って(笑)。

お二人とも自然に出てきたお芝居が役にピッタリだったそうです。

Lynn 収録のたびに音響監督の納谷さんが「普通のお芝居の部分はみんなだったら大丈夫! あとは落語だけだから」と、おっしゃっている印象があるぐらいなのでそうかもしれません(笑)。

江口 ただ、白團治は普段から関西弁を使っているので、収録が近くなると音楽を聞くような感覚で関西弁の音源を聞き続けて慣らすという工夫はしていました。慣れすぎるとほかのお仕事に支障が出ちゃうので短期集中で切り替えて……。でも、やればやるほど自分の中に関西弁が染みてきたというか、すぐに白團治を引っ張ってこられるようになった感覚があります。

Lynn しららは出身が関西ではないので基本は標準語なのですが、ちょっとだけ訛らせた部分もあります。

しららは語尾の「のだわ」も印象的ですよね。

Lynn そうなんです。演じる側としてはシンプルに言いにくいというか(笑)。滑舌が甘くなるとセリフが決まらなくなってしまうので毎度緊張してました。加えて同じ「のだわ」でも感情の違いがしっかり乗せられるように意識してがんばらせてもらいました。

世界観に引き込まれる落語シーンが圧巻!

キャラクター以外では本作のどんな部分が魅力的だと感じていますか?

江口 雰囲気からして「みんなこの街で生きてるんだ!」と伝わってくるような美しい背景や、原作の雰囲気をしっかりと出した色使いは素敵ですよね。しかも、落語で使われる音はスタッフさんが関西まで出向いて収録したそうですし、その回に登場したお話はちゃんと“しっぽなのしっぽ”で解説されていたり、作りがとにかく丁寧で原作や落語という題材の魅力を伝えるための労力を惜しんでいないという印象があります。

Lynn 日常のシーンがかわいくてきれいで癒されるんですけど、落語のシーンになったときにイメージ絵が挟まれて一気に切り替わるのがおもしろいです。途中から「あれ? 私は今、落語の資料を見ていたんだっけ?」と思うぐらいガラリと変わって、なおかつ世界観に引き込まれる作りなのはすごいなぁと思います。アフレコの段階では「尺なんかはあとで調整するので、キャストさんは絵にとらわれずに落語重視でがんばってください」とおっしゃっていただいた部分もあったんですが、実際にピッタリ合わせてくださっていて感動しました。

江口 日常も落語も絵がかなり動くイメージはあります。

Lynn そう、細やかに動くんですよ! 表情もコロコロ変わるので……いやぁ、色がついて動いているしららが本当にかわいい!

江口 序盤はまだ白團治について詳しく語られていないので、しららのイメージの中で登場したときは「なんだ、この怪しい奴は!」というような風貌ですけど、実際に登場したときにどうなるのかがすごく楽しみです。そして、白團治を象徴する尻の質感にもスタッフさんたちはきっとこだわってくださっているんじゃないかな(笑)。

最後に、これからオンエアをご覧になる方に向けて、本作のオススメポイントを教えてください。

Lynn 原作の持つテンポ感のようなものがアニメではより引き立たせられていて、その中に落語という題材がしっかり組み込まれていると思います。落語のことが好きだという方はもちろん、落語のことは全然わからないという方でも楽しめるようにこだわって作られている作品ですので、ご覧になっていただければきっとその良さが伝わると信じています。

江口 時代モノにファンタジー要素を織り交ぜつつも落語についてしっかり描かれているというのが『しっぽな』の魅力です。オンエアをご覧になっていただいた方は『しっぽな』ならではのあたたかい雰囲気を感じていただけると思いますし、ひとつの物語として安心して楽しんでもらえるんじゃないでしょうか。世界観を十二分に楽しんでいただくためにさまざまな工夫が盛り込まれている作品ですので、たくさんの方に見ていただけたらうれしいです!